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シリーズ:間取り再考

玄関は必要か


玄関は必要ですか?

設計を始める時によくこの言葉を投げかけます。クライアントの(というか消費者全般の)固定概念を揺さぶるのに効果的だと思うから。

実は、都内の一般的な規模の住宅で、玄関が主な出入口というのは結構デメリットが多いのです(十二分に広い邸宅ならば別ですが)。

人の出入りが頻繁なので靴を片付けておくのも手間がかかります。また、ちょっとした来客の時に敷居を挟んで応答するのか玄関たたきに入ってもらうのかは悩みどころ。少し話が長くなる時に、わざわざ靴を脱いで上がってもらうのは相手も遠慮してしまいます。それにそうなったら室内も片付けておかなくてはなりません。

現代の多くの住宅の玄関は、言葉では玄関と言いながら機能的には勝手口なのです。サザエさんが三河屋さんとやり取りしているのと同じ。

玄関が玄関として機能していない。

考えてみると、庶民の住宅に玄関が登場するのはかなり近年になってからです。本格的には戦後くらい。街の住宅にはそんなものずっとなかった。郊外の住宅には昔からありましたが、家族はそこから出入りしませんでした。せいぜい1世代半くらい前までは、ほとんどの住宅が土間や縁側を出入口にしていたのです。

夏目漱石の『吾輩は猫である』の家にも縁側があり、様々に人間模様が描かれています。ただ、あの家には女中部屋もあったので、庶民の住宅とは言えないかもしれませんが。

玄関にこだわらなくても、小さなテーブルチェアの置かれた土間を用意したり、中庭の木製デッキから直接室内に入るなど、様々なかたちで出入口をデザインすることが出来ます。

ともすると、現代の勝手口のような玄関は、土間や縁側よりもむしろ貧弱なしつらえと言えるかもしれませんね。(H)


子供室


子どもの成長は早いものですね。生まれてから成人するまで20年(あたりまえですが)、体も心もどんどん成長します。

ドラえもんに出てくるのび太くんの部屋のように、一人で寝起きして勉強もする、というのが子供室の典型的なイメージでしょう。でも、実際にそのとおり活用されるのは小学校高学年から高校卒業までの7〜8年くらい。

乳幼児期にはいつでも大人の目が届くようにしておきたいし、幼少期には一緒に勉強して見守りたいと考える方も多いでしょう。また、高校卒業後は使われなくなる場合も考えられます。一人暮らしなどをはじめると、衣替えのためのクローゼットのようになったりして。こんなとき、子供室は案外役に立たなかったりします。

ひとつの解決策は、最小限の空間しか与えないこと。極端に言えば1帖ちょっと。寝る、着替える、に限定してしまうのです。そしてそれとは別に、家族みんなが並んで座れるスタディルームや、なんにでも使えるプレイルームを用意するのです。

ただし、最小限とはいえ、しっかりとプライバシーを守れる空間にしてあげる。そうすることで、子どもが自分の意思で家族との距離をコントロールでき、またより多くの時間を同じ部屋で過ごすことができます。

子どもにとっては家の中もちょっとした社会です。一人の時間とみんなでいる時間を分けられることが重要だと思います。(H)


北側の居間


日当たりがいい、とは、住宅のよさを表す言葉としてよく使われていますね。とくに湿気の多い日本に住んでいるわれわれは、暖かい陽射しと乾いたそよ風が大好きです。

そこで、いつも日光の恩恵にあずかりたいとばかりにできるだけ日当たりのよい場所に居間を配する計画が一般的です。もちろん正しい考え方だと思います。ただ、ほかの選択肢がまったくないわけではありません。

日光はとても強いもので、衣類や寝具などは日光に当てるだけで殺菌され、着心地、さわり心地もぐんとよくなります。また一方で、身の回りのほとんどのものは日光にさらされることで変質し、劣化していってしまいます。

居間には家族の写真が飾られていたり、何十年も使い続けるつもりで買った高価なソファなどもあるでしょう。こうした大切なものたちが、平日の昼間、誰もいない居間で日々日光にさらされていることに気づいていますか。

北側の光は安定していて、とてもやさしい光です。画家や彫刻家のアトリエは北側に大きな窓のある部屋とするのが基本です。十分に明るく、細かい作業も可能なのです。

また、北側の窓から見ると、樹木や草花がみんな南側、つまり自分のほうを見ています。近所の公園や遠くの山々の緑まで、美しく眺めることができるのです。

北側の居間も悪くないと思いませんか。(H)

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